「トリノホシ」をクリアした
PS2のゲーム「トリノホシ」を、ようようクリアした。
買ったのが今年3月、開封したのが夏で、間に休憩も挟んで、クリアまで9ヵ月もかかった。やりがいのあるゲームだった。
未来の宇宙で、無人の海惑星に不時着した少年が、簡易グライダーでただ一人基地を目指すというゲーム。最初は対話型コンピューターという相棒がいるが、それも途中で故障し、中盤はまったくの一人きり。頼れるのは物言わぬ渡り鳥たちだけ。嵐には巻き込まれる、下手なものを食うとすぐに食当たりになる、凶暴な虫にまで襲われるという悲惨な展開で、心細さのあまりゲームを投げたくなった。
が、もうこれ無理だろと思いながらいろいろやっているうちに、必ずフラグが立って面クリアに導かれるという、絶妙なバランスだった。
最終面(何面かは伏せる)では食料はなくなる、天候は最悪、敵がケツに張り付きっぱなしという三重苦の中で、何十回も墜落死、衰弱死、捕食死を繰り返してようやく乗り切った。
この面をクリアするのに半月ぐらいかかった。もうよっぽど攻略サイトを見てやろうかとも思ったが、ここまでやったのにグーグル様に聞くのも悔しくて意地で自力クリアした。
隣で一緒に見ていた子供たちも大喜びしていた。
SFとして見ると恐ろしく堅実で秀逸。海惑星なので気候が単純であり、赤道付近で発生した低気圧が必ず周期的に襲ってくるなどという設定がしっかりゲーム中に組み込まれていて、低気圧の周期を読んで飛ぶことなどが要求される。しかも低気圧の風向きの時間変化を説明するのに、ここは北半球だからコリオリ力によって渦の向きが逆時計回りになる、などということまで述べられる。
また、この星特有の風変わりな鳥や虫についても、なんのための姿か、なぜそんな風に進化したのかなどということがいちいち問答されて、飽きさせない。
その会話もまた非常にそつのない文章で丁寧に描写され、読んでいて心地よかった。
ゲームをやっていて文章に満足することなんてほとんどないのだけど、この作品は違った。
不満点は、もうほとんど重箱の隅つつきになるのだけど、主人公ヒューゴーの泣き顔が見られなかったこと。
この子が強くて素直で実に愛らしい少年なのだが、地球離れて何百光年という無人の星に落ち、まず確実に父親は死んでしまったと思われるような悲しい境遇で、死の危険にさらされながらたった一人で何千キロも旅をしてきて、ようやく、ようやく自分以外の人間(それも可愛い女の子だ)に会えた、という状況で、なんと喜ぶどころか憎まれ口を叩く。
いや、叩いてもいいんだけど……ここは、へし折れて泣き崩れてもいいところだと思ったな。
もうひとつは、エンディングで食べ物の山が見たかったという点。
飢餓状態でブリザードの中を飛び回る超シビアな最終面を、マジ泣きしそうになりながらようやくクリアしたのだから、宮崎アニメ並みのご馳走を見せてもらいたかった。
ともあれとても面白かった。
余談だが、開発の日本一ソフトウェアという会社が、うちの近所の岐阜県各務原市にあるという点もイチ押しのポイント。
(と思ったら日本一は販売会社で、開発は別会社のようだ)
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