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2007年3月 8日 (木)

宇宙探査シンポジウム

 六、七日と、京都で開かれたJAXAの宇宙探査シンポジウムに行ってきました。
 去年から来年にかけて、世界で五つ以上もの月探査機が上がるんですが、そんな月ブームの一環と言えるイベントでした。

06年9月 SMART-1 (ESA、欧州宇宙機関)
07年4月 嫦娥1 (CNSA、中国国家航天局)
07年夏 SELENE (JAXA、日本宇宙航空研究開発機構)
08年初頭 チャンドラヤーン1 (ISRO、インド宇宙研究機関)
08年秋 ルナ・リコネイサンス・オービタ(NASA、アメリカ航空宇宙局)

 NASAのスペースシャトルとISSの時代が終わって、多極的な宇宙開発が始まっている(あるいは、始めようとしている)。そんな世相を反映して、荒削りなところもあるけれど、やる気があふれているように感じました。
 二日のシンポのうち面白かったことを列挙すると……

・JAXA理事、樋口氏の物腰。宇宙開発は昨今、技術と国防に偏重してきたが、ここらでもう一度、原点である「知の探求」に返ろうという提言。

・岡山大学地球物質科学研究センター、中村栄三教授の講演。はやぶさが持ち帰る予定のサンプルを分析するはずの人。物質の性質とは、その物体が経てきた影響を時間積分したものであり、分析によってさまざまな過去のことがわかるという話。太陽系よりも古い塵、プレソーラー粒子が見つかっているとか、酸素同位対比から地球と月が兄妹であることが明白であるとか、月のホウ素やリチウムの中性子捕捉の具合を調べれば、46億年の太陽活動の記録が読み出せるとか、いろいろと刺激的なことが。
「はやぶさが帰ってきたら、どんなサンプルだろうと我々が責任を持って分析します」という自信に満ちた断言は格好よすぎ。

・読売新聞編集局科学部次長、保坂直紀氏。インパクトで言えばこの人が最高だったかも。冒頭から「宇宙開発分野は閉鎖的なムラ社会なので、もっと開放してもらわなくちゃ困る」。シンポジウム自体を、内輪の盛り上げイベントだといってみたり、JAXAの欠点、たとえば失敗を失敗と言わない(不具合だとか部分的成功と唱える)慣習や論文執筆のために情報公開を渋る体質などを非難して、会場を静まり返らせていました。
 とどめに、宇宙開発なんかなくても困らないんだから、その必要性をよく周知させてくれ、と。
 何がショックだったって、ああその通り、と自分がうなずいてしまったのがショック。ぶっちゃけ月に基地を送る技術があればサハラ砂漠にでもどこにでも基地を作れるわけで、明日のパンのみを追及するならそんなもんやらないほうがマシです。人間が猿より上等だと自認するためやってるのが宇宙開発ですが、別に猿でもいい、と言われたら反論しようがない。これは自分も第六大陸のころから悩んでいること。考えさせられました。
 まあ、科学部次長なんて肩書きの方が、科学を知らないわけがないので、これはあえて刺激的な発言をしてリアクションを見ようとしたのだと思います。それにしても勇気のある人だった。
 しかし、そういう人を招待できるうちはJAXAも大丈夫。

・国際未来科学研究所、浜田和幸氏。話がよくわからなかったので開始10分で退席。

・慶応大学 青木節子教授。宇宙開発にまつわる法律の話。第六大陸でもちょっと出しましたが、地上の法律はまだ全然宇宙をカバーしきれていなくて、いろいろと不具合があります。この方はその方面の専門家。面白い話が聞けました。赤道諸国が静止軌道の領有を主張した話とか、宇宙物体は元々国籍を持っていないとか。
 
 以上、一日目。
 二日目は各国宇宙機関のお歴々の講演。これからいろいろな枠組みを作って共同事業をしようというイベントなので、基本的には仲良くしようぜみたいな話が多かったですが、細部に入れば入るほど食い違いが出ていました。
 NASAのグリフィン長官は無難なことしか言いませんでしたが、ESAのドーダン長官は、西欧人らしくしきりに、「個別の利益と、全体の利益のバランスを取ることが大事だ」「NASA(ナーザ、とフランス風に発音していた)だけではなく、我々はロシアとも共同している」、と牽制球を投げまくり。
 英国立宇宙センター長のウィリアムズ長官の講演は、極めて共感できるものでした。少し長くなりますが、聞き書きメモを抜粋で貼り付けます。

・探査はこの世界を理解する行いだ。イギリスは昔から探検してきた。金星の太陽面通過を狙って世界中に船を出した。100人ぐらいのうち半分近く死んだが、その甲斐はあったといわれた。
・利益とコストをどう考えるかだ。
・100年前は、南極に到達してから基地ができるとは思われていなかった。が、今ではできている。南極はロジスティクスに頼っている。補給と任務のバランスが重要。
・民間に担ってもらうのもいい。
・一般人は悲観的な考えを持ちがちだが、考えは変わっていくものだ。説得しよう。
・財務担当者にも理解してもらわねばならない。
・選択とリソースの集中をせねば。
 火星か、月南極か、月構造か。科学か、技術か、ビジネスか。
・ドイツで10年ぐらいGEOをやっていた。その時は69カ国でフォーマットとプログラムを決めた。必要なのはコミットメントだ。こういうプログラム作りは柔軟性を持たねばだめだ。
・目標は定義可能なものでなければだめだ。
・イギリスは長期的な構想と短期的な構想を持っている。
 短いものでは、2つの可能性のある月探査。ムーンライトはペネトレーターであり、他の惑星でも使える。
 ムーンレイカーは軟着陸するものである。前回はハードランディングしてしまったが。
 既存のものを利用して将来に挑む。
・長期的な計画は、現在イギリスのいくつかのグループが有人について検討している。この夏、レポートが出るはずである。
 現在のイギリスは無人重視である。
・短期的な観点からは、有人計画はコストが高い。しかし長期的に見たら重要だ。イギリス人は今まで有人計画には受身だったが、決して反対というわけではない。
・科学的なのか、利用なのかも考えていかなくては。
・イギリスとしてはGESを支援していきたい。一般市民を捕らえてイマジネーションさせたい。
・探査とは外へ出て行くことだが、ジム・ラヴェルいわく、出て行くことで地球を知ることができる。

 以上。
 一般人の理解を積極的に求めるスタンスと、知への欲求を率直に語ってくれた態度が素敵でした。
 二日目午後のパネルディスカッションは月探査への期待と言うタイトルでしたが、これが一番荒れたと言うか、バラバラでした。ドイツ航空宇宙研のライレ氏が「月探査はレースではないし、火星へのステップでもない。それはそれ自体で価値がある」と言ったそばから、近畿大の河島信樹教授が「宇宙開発はオリンピックである、金メダルを取らなきゃ意味はない」とぶち上げ、それを樋口理事が「月に金メダルはないんですね、月のオリンピックはもう終わっちゃってるから」とフォローしたり。司会のニュートン編集長、水谷氏が四苦八苦していました。
 私はここで、「月には炭素や窒素や、有機物などがなくて、生命の拡大再生産ができませんが、それをどの程度意識していますか。一部の小惑星にはそういうものがありますが、それを採取するつもりなどは」というような質問をしましたが、これはいろいろと失敗でした。言葉の定義とか、言い方とか、予想と事実を混ぜているところとか。
 河島教授には有機物より水だ、水があるかないかの方が問題だと言われ、星出飛行士には月面機に備えられる生活設備の説明をされ、樋口理事には、六ヶ所村でリサイクルを研究している人がいるが、そういう形で生命を維持していくことになる、と教えていただきました。
 私が期待した答えは、地球外での生命材料の調達も考えているというものでしたが、どうも認識が間違っていたらしい。月や宇宙に生活資源がないのはそもそも承知している、それらは地球からの持ち出しとリサイクルで賄う、というのがその場の共通認識だったようです。
 質問のレベルが足りなかったようで、反省。

 おしまいはパネルディスカッション2、JAXAの宇宙探査への取り組みへの期待。
 漫画のプラネテスが(多分)参考にした、宇宙のゴミ問題-スペース・デブリ-という本の著者の、九州大の八坂教授が面白い話をぶち上げていました。今から50年かけて木星開拓をやろうという壮大なもの。
 結論から言うとスルーされていたんですが、きちんと考証されていて興味深かったです。さよならジュピター・リアル版みたいな感じ。H-2Aロケット二段目のLE5を使って計算していたぐらいリアル。

 おまけですが、これの行き帰りは愛知からバイクで行ったので、寒くて大変でした。
 特に帰りの米原は高速走ってるときにみぞれが降ってきて、死ぬかと思った。

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コメント

いまの時点では

「月には炭素や窒素や、有機物などがなくて、生命の拡大再生産ができませんが」

と断言することはできません。

もし極の永久影の中に本当に水があり、それが彗星や始源的小惑星から来たものなら、有機物や窒素もじゃぶじゃぶと存在するはずです。 太陽風起源だとすると、そもそも今中性子で見えているのは水ではなくて、水素である、ということになります。

投稿: 月をみるもの | 2007年3月24日 (土) 09時26分

>有機物や窒素もじゃぶじゃぶと存在するはずです。
第六大陸の時に調べたら、黒部ダムの30倍、60億トンの水があるかもしれないという数字が見つかりましたが、「それだけかよ」と思ったんですよ。地球的感覚で。
今回の質問もその感覚でした。

投稿: おがわ | 2007年3月25日 (日) 22時55分

Following my own monitoring, billions of persons in the world receive the mortgage loans at different creditors. Thence, there's a good chance to find a sba loan in every country.

投稿: YvetteJohns | 2012年2月17日 (金) 22時22分

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