[読書] 夕凪の街 桜の国 こうの史代
以前、大英博物館にこうの史代氏の漫画が展示してあったことを指して、違和感を述べたことがあった。
人の栄誉に対してケチをつける行為なので、自分でも気にかかっており、今回その漫画を読んだ。感想としては、ああやはり、というか。「夕凪の街~」自体はとてもいい漫画だったけど、それがあそこに置かれていたのは、日本漫画としてではなく原爆批判漫画なのだと思った。
ケースの中に開かれていたのは、誰が見てもわかる原爆ドームのページと、ほとんど絵のない、コマ割りだけのページ。その最後に「十年経ったけど 原爆を落とした人はわたしを見て 「やった! またひとり殺せた」 とちゃんと思うてくれとる?」のモノローグ。この、蜂の一刺しみたいな強い一言を、日本人以外には読めない文字としてあそこに置いたのが、展示者のメッセージだったのじゃないかなあ。
旅行記には、日本の展示が弱々しかったと書いたが、意図して弱々しくしたのだろうという気がしてきた。強い存在感を持つ各国の展示の中におかれた、柔らかくて繊細な日本漫画。その較差を狙ったのじゃないかと。
それをやった博物館の展示者の凝りようはわかるけど、あの博物館でそれを世界の人にわかってもらうのは難しそう。
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コメント
>旅行記には、日本の展示が弱々しかったと書いたが、意図して弱々しくしたのだろうという気がしてきた。
植民地に出来なかったので、略奪できなかっただけ。
投稿: K | 2007年4月 5日 (木) 00時39分