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2006年10月 2日 (月)

日本人の宇宙移民

>七月末のセレーネ・シンポジウムでの発言について、変更したい。あの時は宇宙植民についての考えがまだ浅かった。

 今日は、このことについて。
七月末、月探査機セレーネの打ち上げを来年に控えて、振興シンポジウムにパネリストとして出席しました。その席上、日本人が移民したがるかどうかについての文脈で、満州とブラジルについて言及しました。
曰く、日本人は島国に引きこもる民族だと思われがちだが、過去に満州やブラジルに、移民として出て行った史実がある。だから日本人だって、気質上、進出する気がないわけではない。宇宙にだって行けるだろう。
「先方には迷惑もかけましたが」のひとことをつけた上で、そう意見しました。

 しかしその後いろいろ調べてみると、この二つは移民問題を語る上で不適当だったと思われてきました。
まず、満州建国という運動は、それが侵略だったかどうかを脇においてもなお、あまり成功した活動ではなかった。よく語られるのは、満州国が関東軍の傀儡国家として作られ、諸外国の顰蹙をかったという話ですが、ではそこまでやって日本が得をしたかというと、あまりしていない。
1931年の満州国建国以前に、日本人が何をやっていたかというと、国策会社である満鉄の周辺事業をやって、内輪の経済を回していただけだった。出先で中国人、満州人、あるいは(当時のいわゆる)朝鮮人、蒙古人といった人々と、本当に五族共和をやろうとした人間はごくごく少数だった。景気のいい占領地で一山当てて、儲かったら日本に帰ろうという、山師みたいな連中が多かったらしいですね。満州が国になったとき以降は、言うまでもなく農業移民の悲劇があった。

 ブラジルはブラジルで、棄民と言われるほどひどい扱いがあった。移住はしたものの、ろくに作物も取れず、本国のサポートもなく、ほったらかし。留まることも帰ることもできずに一村全滅したところもあった。

 両方に共通するのは、移住を主導したのが国民でなく政府であり、しかも粘り強さや考え深さを欠いたということ。移住した人々にしても、現地に根付こうとした人はあまりなく、最終的には国へ帰ることを考えていたらしい。つまりは日本より居心地のいい第二の故郷を見つけられなかった。
そういうわけで、この両移民を引き合いに出して宇宙移民を語るのは不適当だという結論になりました。 

 アメリカを作った初期の英国移民や、アルゼンチンに入植したスペイン人、それにディアスポラを経験したユダヤ人などに比べると、やはり前後の事情というか、どうしても移民しなければならないという必然性が足りていない、と感じさせられます。
これは、「日本人」というくくりで移民を語るのがよくないってことなのだろうな。むしろ、宇宙移民を考える際には、国境に縛られない方向でいくのが正しいのかもしれません。

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コメント

こんにちは。
結構前にさせていただいた質問の続きになってしまうのですが、答えてくださると嬉しいです。

『老ヴォールの惑星』や『リトルスター』などに登場する主要な女性キャラの名前って、ほとんど「カ」で終わってますよね。これは偶然なんでしょうか。それとも何かお考えみたいなのがおありなんでしょうか。
どうにも気になってしょうがなかったのですが…

よろしくお願いします。

投稿: 高槻佑人 | 2006年10月 3日 (火) 16時17分

>これは偶然なんでしょうか。
偶然です。

投稿: 小川一水 | 2006年10月 3日 (火) 23時12分

>偶然
 だったんですか。あまりにも「カ」で終わる名前が多いので何かワケがあるのかな、などと考えてしまいました。
 もしかしたら奥さんの名前が「カ」で終わってたり? いや、「リトルスター」書いたときは結婚してないはずだから、それはない、もしやお母さんの名前?
 ・・・などなど。勝手に妄想してすみませんでした。

投稿: 高槻佑人 | 2006年10月 4日 (水) 21時31分

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